かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「くれは……あの、奥宮さんは、途中から私が本当のお見合い相手じゃないって気づいていたのに、それでも私と会ってくれていたの」
「え?!」


この空気を変えようと口を開いた私の話に、くれはがわかりやすく驚く。

そうして相変わらず警戒しつつも、興味深げに奥宮さんをじっと見上げた。


「そう、なんだ……じゃあほんとに、ことはに対して怒ったりしてませんか?」


くれはの問いかけに、奥宮さんは迷いなくうなずく。


「もちろん。俺はもう、今すぐにでも結婚したいくらいことはに惚れてるよ」
「け……っ?!」


あっさりと彼の口から出た単語に反応して、思わず声を上げた。

すると奥宮さんは、そんな私にとびきり甘い眼差しを向ける。


「あれ、もともとそれが目的のお見合いだろ? 何かおかしいところある?」
「おっ、おかしくは、ないですけど……っ」
「なら問題ないね。俺のお嫁さんになってくれる? ことは」


プロポーズ……?! 私今、プロポーズされてるの?!

真っ赤な顔で硬直してしまった私の耳に、わざとらしく大きな咳払いが聞こえてハッとした。


「すみませんが、そういうのはふたりきりのときに思う存分お願いします」


声の主はくれはだ。くれはのトゲのある言葉とジットリとした視線を受け、奥宮さんが殊更爽やかに笑う。
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