かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
この4人の予定が合ったのは久しぶりで、ずっと今日を心待ちにしていた。これからみんなで、水族館へと行く予定だ。


「哉太さんこんにちは」
「はい。ことはさんもこんにちは」


哉太さんは私より年上だけれど、いつも敬語で話す。どうやらこれが彼の癖らしく、婚約者であるくれはに対しても基本的にはこの調子らしい。

私の挨拶にまた丁寧な返事をすると、哉太さんがじっと私たちふたりを見下ろした。


「ふたりとも、俺たちが来るまでに変な輩に声をかけられたりしませんでしたか?」
「また哉太は、すぐそういう心配をする……」


大真面目な表情と声音で問いかけてきた哉太さんに、呆れ顔を返すくれは。向かい側の私は苦笑いだ。

眉間にシワを寄せて、哉太さんが答える。


「くれはさんとことはさんは綺麗なんですから、当然の心配です。俺なら放っておきません。それに立花専務だって、よく『昔から近所でも評判の美人姉妹で……』というような話をして──」
「あーもうわかったから! よく真顔でそんな恥ずかしいこと言えるね……!?」
「? 別に恥ずかしいことではないので」


本気で思い当たらないといった様子の哉太さんと、うっすら頬を染めながらため息をつくくれは。

そんなふたりのやり取りを眺め、いつの間にか傍らに来ていた智遥さんがポツリと言う。


「意外と肉食系だよな、哉太」
「あはは……」


彼のつぶやきに、私はまた、困りながらも笑うのだった。
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