かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
こうして晴れてことはに触れる権利を獲得した俺は、実家を出たその足で自宅マンションへと彼女を連れ帰って。緊張でこわばる身体を甘い言葉とキスでほどきながら、とうとうその素肌を暴く許しを得たのだ。

そこからはもう、ただひたすら幸福で甘美な時間だった。ベッドの上で俺の一挙手一投足に熱い吐息をこぼしながら震える彼女はとびきりかわいらしく妖艶で、気持ちが伴っているとこんなにも行為の快楽を引き上げることを知ったのも初めてのことだ。

想像以上の破壊力にくらくらして、つい相手のキャパシティも考えず夢中になっていたと思う。初めてにもかかわらずやりすぎてしまったかと反省はしたが、まあ、本人もなんだかんだで気持ち良さそうにしていたので後悔はしていない。


「……かわいい」


俺の右腕に頭を載せてすうすうと穏やかな寝息をたてることはをじっと眺めながら、自然とつぶやきが漏れた。
すると、彼女のまぶたがピクリと震えてうっすら目を開いた。


「おはよう。ごめん、起こしたね」


声をかけながら、少し乱れた前髪を指先で直してやる。

ことはは無言のままぽーっと放心状態でしばらく俺のことを見つめていたかと思うと、不意に「くふふ」とくすぐったそうに笑みをこぼした。
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