かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~

【こんばんは、立花です。今日はありがとうございました。】


くれはとともにいろいろなパターンを考えつつ、結局そんなシンプルな出だしのメッセージを送った夜から、ちょうど1週間後。

私は今、奥宮さんと約束した駅の前で、彼のことを待っている。


「あと10分……」


バッグから取り出したスマートフォンで待ち合わせ時間を確認しながら、小さくつぶやく。

さすが週末ということもあってか周囲は絶えず人々が行き交っていて、中には自分のように誰かを待っている様子の人もちらほら見えた。

ふと横にあるガラス戸に映り込む自分の姿が気になり、さりげなく全身をチェックする。
今日もまた頭のてっぺんからつま先までくれは直々にプロデュースしてもらった今の私は、どこからどう見ても彼女本人だ。

ふんわりしたシルエットの白のレースブラウスに、風になびく明るい水色のフレアスカート。
髪はいい感じに巻いてアレンジし、メイクも普段の私とは比べものにならない時間を使っていろいろしっかり造り込んでもらった。

お見合い以降、奥宮さんと顔を合わせるの初めてだ。
つい1週間前にも会ったばかりだというのに、この日が来るまで不思議とずいぶん遠く感じた。

くれはは瀬古さん宛、私は奥宮さん宛で散々悩みながら推敲して送ったメッセージに、各々すぐに返事は届いて……連絡をくれてうれしい、ありがとう、といった本心なのか社交辞令なのかわからない文章のあと、奥宮さんは【よければまた会いたい】と続けた。

どうやらそれはくれはの方もだったようで、私たちはそれぞれ同じ日曜日に、トントン拍子で二度目の顔合わせをすることとなったのだ。
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