かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
……本当に? 本気で奥宮さんは、あんなことを思ってくれているの?
“どうして”と“どうしよう”がごちゃ混ぜになって、頭の中は大混乱だ。
ベンチから立ち上がって歩きだした彼の半歩後ろを歩きながら、私の心臓は痛いほど高鳴っていた。
奥宮さんは、さっきのセリフに対する私の返事を聞かない。きっとわかっているのだ。今の私は、奥宮さんがくれる甘い言葉や眼差しに、同じものを返せないことを。
それは私が、奥宮さんに向ける感情の大きさの問題だと──たぶん彼は、そう思っているのだろう。
だけど、実際は違う。だって私はすでに今の時点で……強く、奥宮さんに惹かれてしまっている。
それでも私が口を噤むしかないのは、ただただ、自分の後ろめたさに押しつぶされそうになっているからに他ならない。
奥宮さんは、まだ会って日が浅いこんな私に、言いにくいはずの自分の話をしてくれた。
なのに隣にいる私は見た目や名前すらも偽りながら、こうして図々しくその優しさに触れさせてもらっている。
……苦しい。ぜんぶ、本当のことを言ってしまいたい。
だけどそれをしてしまったら、間違いなく奥宮さんは私を軽蔑するだろう。きっと、もう二度と会えなくなる。
最初はそれこそが目的だったはずなのに、今の私はそうなってしまうのがこわくてたまらない。
利己的な自分に呆れるのに、それでも真実は飲み込んでひた隠す。すべてが自分勝手だとわかっていながら、奥宮さんの横顔を切ない想いでひそかに眺めた。
“どうして”と“どうしよう”がごちゃ混ぜになって、頭の中は大混乱だ。
ベンチから立ち上がって歩きだした彼の半歩後ろを歩きながら、私の心臓は痛いほど高鳴っていた。
奥宮さんは、さっきのセリフに対する私の返事を聞かない。きっとわかっているのだ。今の私は、奥宮さんがくれる甘い言葉や眼差しに、同じものを返せないことを。
それは私が、奥宮さんに向ける感情の大きさの問題だと──たぶん彼は、そう思っているのだろう。
だけど、実際は違う。だって私はすでに今の時点で……強く、奥宮さんに惹かれてしまっている。
それでも私が口を噤むしかないのは、ただただ、自分の後ろめたさに押しつぶされそうになっているからに他ならない。
奥宮さんは、まだ会って日が浅いこんな私に、言いにくいはずの自分の話をしてくれた。
なのに隣にいる私は見た目や名前すらも偽りながら、こうして図々しくその優しさに触れさせてもらっている。
……苦しい。ぜんぶ、本当のことを言ってしまいたい。
だけどそれをしてしまったら、間違いなく奥宮さんは私を軽蔑するだろう。きっと、もう二度と会えなくなる。
最初はそれこそが目的だったはずなのに、今の私はそうなってしまうのがこわくてたまらない。
利己的な自分に呆れるのに、それでも真実は飲み込んでひた隠す。すべてが自分勝手だとわかっていながら、奥宮さんの横顔を切ない想いでひそかに眺めた。