かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「……ずるいなあ」


【それじゃあ、また来週の土曜日に】


ベッドに腰かけながら奥宮さんからのメッセージを眺めて、ため息を吐く。

そのまま後ろ向きで倒れ込み、スマホを持った右手をぼすんと布団に沈めた。

……どうしよう。

見慣れた天井の模様を見つめながら、脳内に浮かぶのはそんな言葉ばかりだ。


すべてが楽しくてドキドキしっぱなしだったあの日曜日からは、すでに3日。

奥宮さんとはあれから何度かSNSでのやり取りをして、ついさっき、次に会う日程が決まったところだ。


「……どうしよう……」


今度こそ声に出してつぶやきながら、私は泣きそうに顔を歪める。

こないだのデートで、最後にするつもりだった。
なのに私はまたこうして、あのひとと会うための約束をしている。


『俺はもう、きみを自分のものにしてしまいたいと思ってるのに』


奥宮さんがくれた甘い言葉や眼差しを思い出すたび苦しいくらい胸がときめいて、それと同じだけの痛みが走った。

わかってる。彼の笑顔も優しさも……全部私が、くれはのフリをしていたからこそ向けてくれるってこと。
ただの“立花ことは”のままじゃ、あんなに素敵なひとと隣合って歩くことすら、できないこと。

……わかってるのに。私はもう、どうしようもなくまたあのひとに会いたくて、離れがたくて、惹かれてしまっているんだ。
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