かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「じゃあ、行ってくるね」


ファーストフード店の賑やかな店内。
席を立ってショルダーバッグを肩にかけ直した私へ、くれはがうなずく。


「うん。……ほんとに、いつでも呼んでね」
「わかった。ありがとう」


真剣な、それでいて心配そうな顔で今日何度も同じことを言ってくる彼女に、やわらかく笑ってみせる。

くれはをその場に残して店を出た私は、歩みを止めないまますっかり夜の帳が下りた空を見上げた。


前回デートをした土曜からたった4日目の、水曜日の夜。
私は今、奥宮さんと待ち合わせているコーヒーショップへと向かっている。

奥宮さんに本当のことを伝えると決めてから、なるべく早いうちに会いたくて──【大事な話があります】と奥宮さんに連絡すると、忙しい中こんなに早く都合をつけてくれた。

今日が休日であるくれはは約束通り奥宮さんと話をする私の近くにいるために、待ち合わせ場所であるコーヒーショップのすくそばにあるファーストフード店で待機してくれている。

私は自分の仕事終わりにまずくれはのいるファーストフード店を訪れ、それから奥宮さんが到着したという連絡を受けた今、まさに待ち合わせ場所に急いでいるというわけだ。
< 97 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop