お行儀よく沈んでよ



「私は嫌いだから」




だからしません。すみません。私自衛は完璧にする主義なので苦手はぜんぶ回避します。




「あ〜、うん、わかる。海ってきもちいーけど髪べっとべとになるもんね」




どこまで不思議を貫くのか。


あつい日差しのせいで頭が緩くなったのか。


私にはわからないが、きっと高確率で気侭に徒然を口ずさんでいるだけで。


青春の1文字も欠片もないけど、海の青がきれいなことは認めてあげようって、脳内で活動中のポエマーが囁く。


透き通っていた。温いくせに突き抜ける風と、塩と、チョコレートみたいな、黒。


私は海が嫌い。髪がべとべとになる。それも理由に加えてあげた。




「なんか、変じゃんね。ぜんぶ」


「たとえば?」


「アホみたいに肩書き気にして、見合わないプライド押し付け合うところ、とか」




だから自分は含めない。


嫌いだとか理由をつけて、ぜったいに傍観を崩さない。バカじゃないのかと上から見下ろす。偉ぶっておとなの顔をしていたいの。


そういうお年頃。伝統じみた物差しで人をはかるな、って、ぜんぶを否定してみせたくて。


なあ、夏。そこでマジで止まって。あつさで頭がおかしくて、そろそろ発揮しちゃう厨二病。




「ゆきみちゃんは、」




黒い眼が、やけに笑みを浮かべていた。


ちょっと冷めた奥二重。かかりそうな前髪から覗くそれは、確かにだれかを萎縮させるもの、だ。




「……うん、」








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