お行儀よく沈んでよ
「それ、今言うのはずるいんじゃありません?」
「誤魔化そうったって無意味ですよ」
「 “ 一方的なお願い ” なら聞かない。アンタに媚び売っても何の得にもならないし」
「あ、やっぱり猫被ってたの」
「そうじゃなきゃやってらんないよ、この暑さ」
「あは。同感」
私は簡単に引き受けるほど心が広くない。はっきり言ってその辺の川幅くらいしか広くない。
面倒くさいのだ。だからぜんぶ気象に責任押し付けて、頭のネジ、一本くらい外してもいい、なんて。
今日限定。
「後出しでもいいよ、見返り」
「…乗った」
口角がつりあげられる。ああ嫌な笑い方。だけどきっとそれは同じなんだろうな、と、保科の目が言ってる。
厭だ厭だ。幼児特有のイヤイヤ期? そう言われても構わない。誰だってすべて投げ出したくなる日ってあるんでしょう。
私がそれ。可燃ごみとして回収してくれないか。分別くらいなら真面目にこなそう。曜日くらい守るさ。
逃避。妄言。拾得。また逃避。
繰り返してぜんぶ却って、そしたら同じだとわらえるの、かな、とか、殊勝にはにかむ。
無理。私に似合わない。らしくない。乙。
「できれば私が得するお願い」
「ぜったい得しかしねーから安心してね」
ひらひらと手を振って、彼は男子共の群れに声をかけた。
「………そろそろ脳外科行きだわ」
私、今日可笑しいもん。