お行儀よく沈んでよ



「……どうしたの? 変な顔してるけど」


「っなーんーでーもない!」




危ない危ない危ないでしょ、バカですか、バカですね。反省会はお布団インして1分以内。急なスケジュール調整まじ困る。しっかりしてよ、私。




「それよかちょっと面倒くさいことになりましたのよ、奥さん」


「なによ、興味あるわ、話してみなさい」


「おあっ、奥さんっつーか女王じゃん。ところで沙優様、私はさ別に保科と、」




仲良いってわけじゃないけど、って付け加えた時、ひときわ大きく吹いた風に、セーラーが翻りそうにはためいた。


髪が勝手に靡く。汗がその隙に伝う。


沙優ちゃんはスカートを押さえて可愛らしい反応で防御する。それを揶揄うつもりで口を開いた狭間。




「ゆきみちゃん、」




後ろから手を掴まれた。




「っっ、うーわ、びっくりした……って保科」


「あはは、変な顔してんね」


「アポは取ってくれよ。急な来客は困るぜ」




いや力強。手、熱。つーか本当に困る。


わかっているのか。保科は。


薄く笑う仕草で飛ばしたこの男は、沙優ちゃんをじっと見つめた。




「ゆきみちゃん、来て」


「は?!」




沙優は呆気に取られた様子で保科を見て、私は怪訝に声をあげた。来てってどこにだよ。意味はわからないし、私はまだ “ ゆきみちゃん ” でインプットされているのか。


今更ながら逃避して、不吉な笑みの黒い瞳が、私に向くまで。


たぶんさっきのやり取りの延長なんだろうなあ、って。笑顔を引き剥がされていく気がして超焦る。やめてよ、今日の反省会の議題増えちゃう。




「待、」


「た、ない」











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