お行儀よく沈んでよ
彼の肩に額を押し付ける。
湿った服に温度。
あつい。眠い。怠惰。
「わかってる、私嫌な人間だし、愛想笑いばっかりで怖くて一歩も進めない。おまけに色気も淑やかさもない、ただのお子様」
「そこまで否定しなくてもいーんじゃない?」
「ネガティブスイッチ押したのアンタだから責任取れ」
「情緒不安定すぎて草」
今日は1分以内の反省会で終わらない気がした。
嫌なことばかり実感できた最低な1日。髪はべっとべとだし、制服もぜんぶ濡れてしまって、無事なのは脱いでいた靴と預けていた鞄くらいだ。
私、可愛くないよ。
知ってる。でも繕っていないと私、私でいられない、し。みんな、知らないし。
「つーか保科だって、なんで私のこと知ろうとすんの?」
断層並みに常人から逸れているくせに、単なるクラスメイトである私のこと、なんでこんなに構うの、って疑問。
同じ目線だとか、カテゴリーに登録。
挙句お手手繋いで海にダイブ。
心中するのかと思った。あんなにやさしい顔するから。なーんて。浸るしかない状況。
「私たち、隣の席になったときくらいしか話してなかったのに」
「ああわかった。ゆきみちゃん史上いちばん猫被ってた時期だね」
「そんなことは言わなくてよろしくてよ」
挨拶程度の会話、ペアで出された課題。
あとはほんの世間話と惰性に流せる趣味諸々。
それくらいしか、関わったことないのに。
「だって俺、ゆきみちゃんのこと好きだから」