お行儀よく沈んでよ
ない、のに。
髪の先から、ひとつ、海に落ちた透明。
思わず顔を上げて。
「え?」
聞き返せば、保科は愉快そうに笑い声を零した。
「可愛くないゆきみちゃんが、かわいーの」
「待って、説明」
「説明も何も俺は愛の告白をしているんですが」
「愛の、」
こくはく、あい、……マジですか。
「えっ、保科、私のことが好きなの?」
「は? 言ってんじゃん、好き好き好き、ゆきみちゃんのことがすーきーでーす」
「マジかよ」
の割にはサラッと言うから冗談かな、なんて、思うほど軽く言うものなんですか? 愛ってのは。
……あ、でも、ちょっと。
ちょっと重いかも。
って気づいて5秒。
「……私、可愛くないのに?」
「それも言った。可愛くないゆきみちゃんが可愛いよ、あと20年くらいはそのままでいてほしい」
何でもないように吐露していく保科の、耳が、赤い。だからつられた。あつい。何だか心臓が高く急いて。
可愛くない私が可愛い。とかめちゃくちゃ失礼。
だけど苦しいより全然つめたいやさしい言葉で、ぎゅって心が狭まっていく。
「俺ね、ゆきみちゃんがヘラヘラしてんの超嫌いだったんだよ、最初」
すうっ、てまた進む。
「ぜんぶ誤魔化してるみたいでイライラするし」
「おい、もれなく私に刺さってるぞ、苦情」
「自分で首締めてんだもん。バカだなあって、ちょっと人間性疑った。そういう性癖い? って」
「めっちゃ失礼だからね、私が寛容だから許してんだからね?」
でも、保科は。私を同じだって言うけど。
同じだって言うけど、私に何も求めない。
近い場所で呼吸音が囁いて、私のことを呼んで、それがやさしいから。
「でも好き」