お行儀よく沈んでよ



強がりって、火力強すぎない?


でも許そう。私は寛容だから。うそ、ちょっとだけ仕返ししてやる。って言えば保科が口を尖らせた。




「名前だって “ ゆきみちゃん ” だし?」


「ええー合ってるでしょ。雪見 莉佳(ゆきみ りか)ちゃん」


「私の名前は莉佳ですけど、」


「ゆきみちゃんは色んな人に “ 莉佳 ” って呼ばせるんだもん。ちょっと妬いた」


「……ねえ、何なのさっきから。いきなり、さあ、アピールとか……、全然大歓迎」


「それならいいよねえ、ゆきみちゃん」




なんだ。


もう。


もう。


暑さで本当にやられちゃった。




「でも海はもう勘弁」


「ああそれね。もうしないよ、楽しかったけど」


「っていうか…、私に告るんなら正攻法で良かったんじゃないの?」




変に私の嫌なところ刺激してくれちゃって。


だからすんなり進まなかった、気、しなくもない。


ず、と保科が歩くスピードが落ちる。


下を見ると砂浜に呑まれている。片足。白くて、ざらりと貝殻が爪先に当たっていた。


落ちないように首に回した腕と支える肩に力を込める。海水、太陽にあたるとあつい。体温。




「そんなんじゃ、ゆきみちゃんの可愛いところ、見れないじゃん」


「へえ。やっぱり嫌がらせだったわけだ」


「そうじゃないよ」




よいしょ、と抱え直されて、私は保科の横顔を覗いた。








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