お行儀よく沈んでよ



海が所有物かのように光を反射、風は生温いまま。


アスファルトは陽炎。


夏の手前。それでもあつくて苦しくて。


でも肺呼吸でも構わない。


来世エラ呼吸ができるなら好きになれそうだけど、私まだ肺呼吸だから。


ね、残念。


あつさだけは手放さない。この重苦しい恋情を、雁字搦めをほどいて、楽に勝手にあいつを嫌う。


苦しいのは嫌。しんどい。呼吸面倒くさい。


頑張らなくても。それでもいいから。




「保科、落としたら拳骨だから」


「海以外には落とさないよ」




素直にきみを恋うことにした。


太陽はまだ高い。









< 29 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop