お行儀よく沈んでよ
さざあって海が鳴る。
堤防の上を歩きながら、ため息をつく。
太陽のいらないところをぜんぶ反射させて、自分のもののように光るあいつが私は許せない。
勝手に日照るおまえもだ。自然に文句を言うなんて罰当たりだけど勘弁して。最近ステイホーム明けで体がついていかねえんだよ。
ここ最近の異常気象。ぜんぶ人間の責任でした。やめてくれ、そろそろ怒るぞ、大自然。
「はあ、アホらし」
くだらないあれこれを脳内に打って捌いて煮て食べて。夏手前のくせに喧しいセミが元気に空気を彩って。
せめてもの救いだと言いたげに吹き抜ける温い風が、着ているセーラーを大袈裟に揺らした。
しゃり、と齧りとったアイスの欠片。あっさりと舌で消える。口内はすこし冷えて、また頭が冷たい音を響かせた。
あつい。冷たい。夏、その辺で止まってて。
ひとつに結った髪が鬱陶しい。再び暑さに喚きそうな隙間に、私は足を止める。
「……げえ、」
女子らしからぬ声でも今の世では許されます。
平安のお姫さまのように “ かれは何ぞ ” とかお上品に言わなくても許されます。つーか姫じゃないし。
「何やってんのー!」
吸い込んだ息。そう言って吐き出すとき、すこしひんやりとした。