お行儀よく沈んでよ
再度確認、ここは海の街だ。
崖なんて数えるのが億劫になるほどある。うそ、それはちょっと盛ったかも。
とにかくそこらじゅうに存在している。
でもそのいちばん危ないと言われている崖の付近に、見慣れた友だちが10人ほどそこにいた。
「あっ、」
そのうちの1人が私に気づいた様子で名前を呼んで。なぜか手招きする。
えええ、行きたくねえ。だけどちょっと興味が湧いたから行ってみる。すこし湿っぽい。スニーカー履いててよかった。
翻そうなスカートを押さえて登りきると、何人かが笑顔で寄ってくる。
「何してんのさ、こんなとこで」
「イイコト」
「あっ、私今日は定時で、」
「帰さねえよ?」
何を隠そう私の親友、沙優ちゃんがこのバカ集団に加わっていて、なんと今日は家に帰してくれないらしい。
「なるほど、私は分岐ルートを華麗にミスったわけだ」
「ギャルゲーか、もしくは乙ゲー?」
「やめてよ、沙優ちゃん。きみの口からそんな単語は聞きたくないよ!」
「はっ倒すぞ」
とか何とか。沙優ちゃんは基本私にやさしくない。