お行儀よく沈んでよ
沙優ちゃんは必死に隠しているようだけど残念、私はもちろん、クラスのほとんどは知っている。
「言いがかりはやめてくれマジで。私は別にこれっぽっちも、別にあいつの、応援したいとか思ってないし、全然」
「沙優あ、恋する乙女じゃん〜」
パピコを咥えた子が沙優にべったりと抱きついた。
「すきなんだよねえ? 田中くんのこと〜」
「ずっと目で追ってたし、誘われてうれしそうだったもんねっ」
「沙優ちゃんってば完全に乙女顔だったし」
「………やめてほんと、恥ずかしい」
恋とは素晴らしいな。あんなに生真面目辛辣正論丸投げスーパーガール・沙優ちゃんが可愛く見える。
ふふふ、と仏の顔でわらっていると、照れた沙優がなぜか私の二の腕に強烈なパンチを繰り出した。
は? 照れ方凶暴か? 野生児か? すみません。
「つうか、そういうの聞きたいんじゃなくてさあ〜、根性だめしとか言ってまだ誰も挑戦してないじゃん」
見た感じ、みんな学校帰りに寄り道して遊んでますってだけで全然フツウじゃん。
「よおし、沙優ちゃん行ってこい。田中くんを唆してきな」
「結局アンタも参加するのかよ」
バカ集団に加わる気はないけどさ、火サスの刑事役はやってもいいかなって思うのだよ。おもしろいじゃん。言ってみてえよ、あのセリフ。