微温的ストレイシープ
つぎの瞬間、ひっと息を呑んだのは男たちだった。
「お、お前……だったのか!?な、んでこんなところに……!」
ようやく正体がわかったとでもいうような反応。
畏怖すら感じさせる視線を向けられてもなお、彼はただダルそうにしていた。
月明かりの下、気高き獅子は銀色のたてがみをかき上げて。
「ま、マルバスの衛藤廉士……!」
マルバス……?
衛藤、廉士……?
心の中で、彼に向けられた言葉を反芻する。
臆する男たちはなにかを決心したのか、ケモノのような声を上げて、彼に飛びかかっていった。