微温的ストレイシープ
どこだったっけ……
なんて頭に浮かんだ疑問を解くまえに、ユキノさんがまた動いた。
あくまでも狙いはわたし。
その前に立ちふさがる廉士さんが邪魔だといった様子だった。
ユキノさんと廉士さんのにらみ合いがつづく。
「……向こうに行ってろ」
「え……?」
「お前だ。お前に言ってる、榛名。部屋から出ていけ」
「で、でもっ」
目の前にひろがる背中に手を伸ばそうとした。
そして……やめる。
わたしがここにいたって邪魔なだけ。
「……わかりました」
ちいさく頷いて、ドアに向かって走る。
途中、ユキノさんの猛攻が襲ってきたけど。
廉士さんがそれを防いでいてくれて、なんとか滑り込むようにして最初の部屋に戻ることができた。
出た瞬間、ドアが大きな音をたてて閉まって。
「っ……」
ドアの近くにずるずると座り込み、身体が震えていることに気づいて膝をかかえる。
そこに顔を埋めて、ただじっとしていた。
どんっと何かが倒れるような音や、割れるような音がする。
でも……2人の声は一切しなかった。