微温的ストレイシープ
「それで、あの……ユキノさんは?」
「ああ、なんとか落ち着いた」
わたしを離した廉士さんが立ち上がる。
そして部屋に入っていくから、すこし迷って、おそるおそるついて行く。
テーブルが倒れていたり、棚の扉がひらいて中の物が床に乱雑していたりした。
その中心でユキノさんはソファに座っていた。
表情はまだすこし険しくて、右頬がちょっとだけ腫れている。
「はあぁー……いったぁー……思いっきり殴りやがって、」
「手加減はした」
「わかってるわよ、あんた右利きだし。それでも総長サマのパンチは効くわ……」
そう言って背もたれにもたれかかるユキノさんは、
わたしに気づいているはずなのに、決して目を合わせてくれない。
「……あの、ユキノさ」
「悪いけどもう出てってくれる?いまもけっこーぎりぎりなのよね」