微温的ストレイシープ



「それで、あの……ユキノさんは?」

「ああ、なんとか落ち着いた」


わたしを離した廉士さんが立ち上がる。

そして部屋に入っていくから、すこし迷って、おそるおそるついて行く。


テーブルが倒れていたり、棚の扉がひらいて中の物が床に乱雑していたりした。

その中心でユキノさんはソファに座っていた。


表情はまだすこし険しくて、右頬がちょっとだけ腫れている。




「はあぁー……いったぁー……思いっきり殴りやがって、」

「手加減はした」

「わかってるわよ、あんた右利きだし。それでも総長サマのパンチは効くわ……」



そう言って背もたれにもたれかかるユキノさんは、

わたしに気づいているはずなのに、決して目を合わせてくれない。



「……あの、ユキノさ」



「悪いけどもう出てってくれる?いまもけっこーぎりぎりなのよね」


< 103 / 211 >

この作品をシェア

pagetop