微温的ストレイシープ
「もう冬だもんね。今年はかなり冷え込むらしいよ」
「そうなのか」
「灯里はきっと寒がってるよ。だってあんな薄着じゃ、この寒波はむりだって」
「……ああ」
つい先日まで秋の空を3人でながめていたのに、となつかしむように空を見あげる。
そんな弟をなぐさめるように榛名宇緒がそっと背中に手をやった。
「いこう、奈緒くん。俺たちの手で灯里を見つけだすんだ」
「……わかってる」
そのうち、このふたりの兄たちにも余裕がなくなってくるのだが、それはまだ今じゃない。
すこしずつ身体の中に溜まっていくものを感じながら、ふたりは灯里を追いかける。