微温的ストレイシープ
……もしかしたら。
「もしかしたら、わたし、殺人鬼だったりして。この痣だって、そういう……なんて。はは、いまのは忘れてください……」
すぐにその考えを打ち消すけど、もやもやだけが心に残る。
ありえない話ではない。
「もしお前が人殺しだとしてもやることは変わんねーだろ」
かけられた言葉はわたしを擁護するものでも、見かぎるものでもなかった。
「まだ一緒にいてくれるんですか」
「そういう約束だからな」
「記憶を戻したわたしが急に襲いかかったらどうするんです?」
「そうだな。そのときは苦しまないようにやってやる」
なにを、とは怖くて聞けなかった。