微温的ストレイシープ
冗談なのかどうか分別しづらいから追求することもはばかられる。
でも廉士さんはわたしのあたまをぐしゃぐしゃに撫でてから歩き出した。
「余計なことは考えないようにしろ。俺たちのすることは何も変わっちゃいない」
「……はい」
「あんま陰気くせー顔してんなよ。こっちが疲れるから」
「陰気くさい顔は元からです」
ふっと笑われる。
おおかた、たしかにとでも思ってるんだろう。
そこにわたしのことを怖がってる様子はこれっぽっちもない。
犬じゃないからわしゃわしゃされて気持ちいいとはならなかったけど、気持ちがすこしだけ楽になった気がする。
と同時に。
とくん、と聞き慣れない音が自分のなかでした。