微温的ストレイシープ
「な、なりゆきですか?」
「ああ。気づいたらそうなってた。親はもういないし、帰る家もない」
「それは……」
淡々と事実を告げるように話すその姿は、とっくの昔に吹っ切れているようだった。
「だから同情はいらねーよ。そんなものは求めてない」
「……そんな大事なこと、なんでわたしに明かしてくれたんですか」
「おめーがしつこいからだろ。距離の詰め方がバグってんだよ」
あくまでも重苦しい話にはしたくないらしい。
だからなのか、すこし笑って足早に進もうとしていた……けど。
その行く手を阻んだのは、
「……はあ。悪いな榛名、足軽だ」
「誰が足軽だ。この獣」
あの能面のような集団。
廉士さんの正面、数メートル先に。
男たちが……シュトリが、立ちはだかった。
さっきより人数も増えているような気がする。
「廉士さん、どうしよう……」
「強行突破だろ。つかまるなよ」
退く、という考えははじめからないらしい。