微温的ストレイシープ
「おい。自分のガキを灰皿代わりにする親がどこにあるんだ」
「あんただってこのまえ酔ってやってたわよ」
「そうだったか」
「そうよ。ばぁか」
キッチンで、酒以外なにも無い冷蔵庫のなかを漁っていたもうひとりの化け物が豪快に笑う。
「廉士は吸い殻と同じ髪色をしているからつい、な」
「ほんと。あたしとあんたのどっちにも似てないわよねぇ」
じっと女のほうの顔を見つめていれば、不愉快げに眉をひそめられる。
「その目。やめろって言ってんでしょ。気持ち悪いのよ、あんた」
まるで物置小屋のようなおんぼろアパートの一室に響く破裂音。
遠慮のない平手がもう一度顔めがけて飛んでくる。
「いっつもそうやってあたしらを見てさぁ。どーせ心のなかでバカにしてんでしょ?」
ああ、してるよ。
してるにきまってんだろ。