微温的ストレイシープ
「つーかお前もそれなりの過去を背負ってそうだけどな」
「うん……、うん」
んなことよりも大きさ合わなさすぎ。
上着、ブカブカだし。
榛名の頭において動かしてみた手は、どうしてもぎこちなくなってしまう。
仕方ない。やり方を知らないのだから。
やり方も知らないのに、なんでやってんのかはわかんねーけど。
「廉士さんはちゃんと生きてるよ。どんな世界にいたって、廉士さんは廉士さんだ。どこにいたって同じ。親なんて、出生なんて、関係ないよ。ぜったい、関係ないもん……」
……ああ、この顔。
前に見たことがある。
たしか当麻も同じような顔をしていた。
そうとわかった瞬間、とたんに可笑しくなってくる。
本当に、どいつもこいつも。
「……もっと早くに出会っていたかった」
それは榛名の言葉だったのか、
俺の言葉だったのか。
ただ……
視線を動かす。
さっきまで俺の手の中にあった、まだ数本残っているタバコの箱。
くしゃりと潰れたそれだけが、すこし離れた地面に投げ捨てられていたのだった。