微温的ストレイシープ
頭の上ではっと笑われたのがわかった。
「まじで羽でも生えてんの。臓器入ってる?」
「そ、その臓器が、いま、大変なことになったばかりです……」
口を押さえるけど臓器は出てきていなかった。
よかった。
それでも鼓動はまるで太鼓を打ち鳴らすようにドンドンいってる。
「廉士さんは猫の血でも混じってるんですか?一体、どんな身体能力を……」
「俺も一か八かだったけどな。コツがあるんだよ」
そしてひょいと地面に下ろされたけど、そのコツとやらを伝授されることはなかった。
教えてくれないのかな。
じっと見つめていれば、たぶん何かを察したんだろう。
「必要ないだろ。つーか真似するなよ。しようもんなら、」
「しようもんなら?」
そこまで言った廉士さんは首を持ち上げた。
まるでお月様を見上げるように、わたしもその視線の先を追う。