微温的ストレイシープ
このまま二人きりになれたらいいのにな。
……なんて。
叶うわけもない願いは、お月様に届く前にかき消されてしまったと思う。
わたし、きっとこの人のことが好きだ。
だからそんな気持ちも本人には伝わらなかったはず。
いや、どうか伝わらないでいて。
「なにぶつぶつ言ってんの」
「いやあの、ちょっと、煩悩が」
どうせ報われないなら、知らないほうがよかったのかな。
……そんなことないよね。
誰かを好きになるって気持ちを知れただけでもよかった。
たとえ叶わないとしても、伝えられないとしても。
わたしの気持ちに変わりはないのだから。
「……つき、綺麗ですね」
「は、いま言うことかよ」
廉士さんは空を見上げて呆れたように笑ったのだった。