微温的ストレイシープ
「失礼します」
廉士さんの足を確認する。
そこは目を背けたくなるほどに酷く腫れていた。
「これ……」
「あーあ。情けねーなぁ……」
まるで隠し事がバレた子どものように、廉士さんは薄く笑ってみせた。
なにも足の怪我だけじゃない。
ここまでわたしを守ってくれた彼の疲労は相当なものなんだろう。
いくら何人を相手に渡り合えても、3階から平気で飛び降りられても廉士さんは人間だ。
わたしと同じ、無理をしたら祟る人間なんだ。
「……廉士さん」
「謝るなよ」
「へ、」
「お前のことだ。どーせ自分のせいだとか罪悪感がー、とか……思ってんだろ?」
「……」
廉士さん言うとおりだった。
喉元まで出かかっていた謝罪が、どこにいくでもなく消化不良のように残る。
「覚えておけよ。それが癖になったら逆効果だからな」