微温的ストレイシープ


たしかに思い返してみれば、自分には謝り癖があるかもしれない。

でもいまはそんなことよりも気にすることがある。




「これ、着てください。元は廉士さんのものなんですから」

「いらね。つーか、どっちかっつーと暑いんだよ」



その言葉に、頬やおでこに手を当てる。



……熱はない、みたいだけど。




「……わたし、行ってきます」

「は?どこに」


「お店を探して、必要なものを買ってきます!さっき見えたんです、飲み屋街が」



この先をまっすぐ進めば、飲み屋街が見えてくる。


きっとそこには何かお店もあるだろう。



こんな時間にあいているところは限られているだろうけど……それでも行ってみなきゃわからない。




「すぐ戻ってきます!だから大丈夫です」

「おい、まて。灯里」



わたしもまだ息を整え切れてなかったけど、すくっと立ち上がる。









「おまえ、金あんのかよ……」



このとき、じつは廉士さんは財布を落としていたんだけど。


そんなことに気づくこともなく。



すでに遠く離れたところにいたわたしにもその声は届くことはなかった。



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