微温的ストレイシープ



「あ。あった、コンビニ……!」



さすがに深夜なこともあって、いつもなら賑わっていそうな飲み屋街も人の姿はない。


そこを足早に通り抜けてすこし進むと、真昼のような明るさを放っている場所が見えてきた。

まるで一気に目が覚めるような光に一瞬目がくらむ。


久しぶりの明かりに、走ったせいで乱れていた息がすこしだけ落ち着いた気がした。




「いらっしゃいませ」


コンビニに入ると、女の店員さんがひとり。

こんな深夜に?と思ったけど、すぐに目的のものを探しに行く。


目当てのものはすぐに見つかった。


氷と袋でアイシングはできるはず。

どこかの本で読んだことがある。


そしてレジに並んで、お会計をしてもらおうと思ったんだけど。




「……あ」



ようやっと無一文であることに気づいた。


嘘でしょ、ここまで来てそれはない。

でもお金がないとどうしようもできなくて。


廉士さん、お金持ってるのかな。

あれだけ動いてたんだからどこかに落としてそうな気がする。


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