微温的ストレイシープ
ま、待て?
それって、よく犬とか猫に言う……?
「えっと……で、できます」
なにか外せない用事ができたから、待ってろってことだよね?
それなら、
戻ってきてくれるだけでありがたかった。
ヘタに動くこともできないし、わたしは端のほうによって三角座りをする。
「ここで、待てしてます」
そんなわたしを横目で見たあと、
廉士さんは無言で立ち去った。
いまの季節は冬なのか、春なのか。
どちらにしても夜の冷え込みはいやにちくちくと肌を刺激する。
ワンピースから伸びる足を隠すように小さく、もっと縮こまるように膝をかかえた。
さっきまで見えていた月は、ここからじゃ見えなくて。
黒々とした壁ばかりがわたしを囲んでいた。