微温的ストレイシープ
「……わたしって、いい匂いします?」
「は?」
「いや、その、甘いなーって感じたりとか……ないですかね」
またしても怪訝な顔をされる。
変なことを言ってしまった。
「やっぱり何でもな……」
淡くわらってごまかそうとしたとき、ぐいっと身体が傾いて。
簡単に引き寄せられてしまった。
そのまま数秒。
体感はもっと、ずっと永く感じた。
「……甘く感じたら、なんかあんの?」
「み、耳元で話さないでください」
まるで眠りから覚めたばかりのような、すこし掠れた声。
それが顔のすぐ横、さらには耳の近くから届いた。
「っ、虎牙さんが……」
「は?なんでいまコウガの名前が出てくんだよ」
だから、耳元で話さないでって言ってるのに!
廉士さんは、なんだかすこし怒ったような声色。