微温的ストレイシープ
その言葉に顔があがる気配がする。
わたしはもう、彼の顔も見れなかった。
「……本気で言ってんのか」
「はい。ごめんなさい、本当に。いままでお世話になりました」
ありがとうございました、の言葉は真っ暗な空を見あげたままつぶやく。
顔を下げてしまえば、その拍子に涙がこぼれ落ちてしまいそうだったから。
「廉士さんも気づいたんでしょ?わかってるんでしょ」
なにが光の雨だ。
差し込む日なんてどこにもなかった。
ぱっとひらけるように分厚い雲が捌けていく。
その向こうに広がるのは、光なんかじゃなかった。
どこまでも続く、
わたしだけじゃなくて周りの人まで苦しめる
……災厄だったんだ。
「わたしには、人の心を壊す性質がある」
だからもう一緒にはいられない。