微温的ストレイシープ
そんなとき、
「わっ」
腕をぐいっと引かれ、ほとんどよろけるように立ち上がる。
「やっぱ置いてったほうが面倒なことになりそうだな」
わたしの腕をつかんでいるのは廉士さんだった。
まるで苦渋の判断の末、とでもいうような顔。
眉間のしわはそのままだったけど、わたしの顔を見てもっと険しくなる。
「なんで嬉しそうにしてんだよ。気持ち悪」
「ごめんなさい」
ぱっと離された腕。
わたしは自分のほおを引き締めるように叩く。
いま来た道を戻っている廉士さんのあとを追いつつ、わたしは問いかけた。
「どこに、行くんですか?」
たぶん答えてくれないだろうなと思ったけど、予想に反して振り返ってくれた。
「あーー…………秘密基地」
何言ってんだこの人、
と思わなかったといえば、嘘になる。