微温的ストレイシープ
§




「あのーちょっといい?」

「はい?なんでしょう」


「ここに、これくらいの女の子が来なかった?」

「女の子、とは?」



某コンビニにて、双子の兄、榛名宇緒はとある少女を訪ねていた。


もちろん実の妹、榛名灯里の捜索である。




「俺たちと同じ髪色で~背中くらいまで長さがあってぇ~……んーあとはなんだろう」



助言を求めるように双子の弟である榛名奈緒を振りかえるが、弟は肩をすくめるばかりで口をはさまず二人の会話を聞くばかりだった。




「あ、そうだ店員くん。君、鼻はいいかい?」

「鼻?いえ、とくに……」

「その女の子、ある条件を満たすとあまーい匂いがするんだけど……わからない?」

「申し訳ありません、わかりません」


「匿ってるとか、ないよね?」

「いいえ、ありません」



若い店員はその一点張りである。



兄たちがここに来たのは他でもない、GPSがこの場所を示していたからだ。




「……手荒な真似はしたくなかったんだがな」

「お、やっと喋ったね奈緒くん」


「わりーな、こっちも切羽詰まってんだわ。……兄貴」

「はーい。俺バックヤードのほうね」

「じゃあ俺はこいつ、ってわけか」



「え、お、お客さまっ……!?」



恐怖の色に染まった店員の瞳には、飢えに飢えた獣がうつっていた。



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