微温的ストレイシープ
「で、結局いなかったし。なんだよもう、時間の無駄だった」
「ほんとに合ってんのかよ、それ」
「合ってるよ」
「壊れてんじゃねーのか」
それまで反論していた榛名奈緒もさすがに不安になったのか、顔についた血を拭おうともせずに端末をかざす。
「壊れてるのかなぁ、これ」
そうしてしばらく眺めていたと思えば、
──────ガシャンッ
おもいきり、地面へと叩きつけた。
さらに足で潰すように踏みつける。
三度目で、端末の画面はこときれたように真っ黒になった。