微温的ストレイシープ



「あはは、あはははははっ!」



薄々気づいていた。

自分がいちばん壊れているということに。



奈緒くんもおかしくなってるけど、俺ほどじゃない。


他の奴らも、まだここまで狂ってはいない。



なんで俺だけこんなに進行が早いんだ?


そう考えたとき、答えはすぐに出てきた。





俺がいちばん弱いから。



灯里の性質の厭なところは、心や身体が弱っている人間ほど効きやすいということ。


つまり、自分をしっかり持っている人ほど効きにくい。



まあ……長い間あの子と一緒にいると、問答無用でおかしくなるんだけど。






「……あ、あの後ろ姿って、」



がむしゃらに走っていたつもりだったけど、どうやらそうでもなかったらしい。



意図せずとも頬がつり上がっていく。




そこにいたんだね、灯里。


逃げても無駄だよ。



俺たちからは……




運命からは、逃げられない。





野ウサギを捕まえる捕食者のような気持ちになりながら、その後ろ姿を追いかける。



そして、









「つかまえた」





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