微温的ストレイシープ
「わたしごときにこんな大勢でお出迎えですか」
「なんだ、嬉しくないのか」
「あなたたちの求めてる人はここにはいませんよ」
あいにくですが。
わざわざ足を運んでもらって申し訳ないですね。
この人たちの狙いははじめからわたしじゃない。
だから腕を振り払おうとしたけど、すこしも緩まない力。
むしろもっと、まるで握りつぶさんばかりに力を込められる。
「っ、いた……」
「たしかに求めているのはあいつだが、お前に用がないわけでもない」
「はあっ……?」
「あの男はなかなか捕まらない。それに、ちょこまかと逃げ回りやがる。そこで餌を撒くってわけよ」
その言葉に拳をぎゅっと握りしめた。
だれがちょこまかと逃げ回ってるって?
あの人は最初からずっと、ひとりでも戦ってたのに。
平然とそんなことが言えるのが、ほんとうに不思議でならない。