微温的ストレイシープ
𝘭𝘶𝘯𝘨
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「秘密基地って、ここですか?」
わたしが見上げているのは、この辺りでもいちばん背の高そうな建物。
これをビルと形容していいのかどうか、ぽかんと口を開けて考えていた。
「おいアホ面」
上げていた首を無理やり下げられるから、口から変な声が出る。
廉士さんがそのままわたしに顔を近づけて、半ば脅すように視線を絡ませてきた。
「いいか、いまからひと言も喋るなよ」
「へ?な、なんで……?」
「いいから、お前はただ黙ってニコニコしてろ」
なんで、ともう一回聞きたくなった。
もしかして、これから行くのは危険な場所なの?
すこしでも声を上げたら身の安全を保証できないとか、そういうこと?