微温的ストレイシープ
わたしはただ黙ってふたりの会話を聞くことしかできない。
話ながらも、ふたりは襲いかかる敵を押し伏せている。
「この際だからはっきり言わせてもらうよ。こんなところにいるよりも、他にもっとやることがあるだろ。なあ、あんたがいま、いちばん守らないといけないのはなんだ」
とん、と。
まるでつま先から地面に降りたつような軽さと、それでいて気持ちの重みも込めて。
廉士さんのせなかを押したんだ。
「心のなかではとっくに決まってるんだろう?
──────いけ、はやく!」