微温的ストレイシープ
……夜が明ければ、わたしはどうすればいいのだろう。
すくなくとも廉士さんとはここでお別れ。
だとしたらわたしは、もうこの世界に残る意味はなくなる。
一夜だけだったけど、会ったばかりだったけど……わたしには廉士さんしかいない。
記憶がよみがえってきたいま、またあの家に帰ろうという気持ちにはならなかった。
「……廉士さんがなんで理性を保てているのかはわかりませんが……わたしといれば必ず、精神が壊れてしまいます」
いまは正常なようにみえるけど、このまま一緒にいれば必ず自我が崩壊する。
いまこの瞬間だって、進行は進んでいるかもしれないのだ。
「わがままだってわかってます。甘えたなことも、いっぱい言ってきました。それでもこれは廉士さんのために言ってるんです。これ以上、一緒にいないほうがいい」
だから──────────
ぱちん、
そのとき
最後の泡が……記憶が
もどってきた。