微温的ストレイシープ


「ついてきてください」



ふらりと、ある場所へ向かう。

ここはわたしたちが最初に出会った場所だった。


あれだけ走り回って、動き回って。

意図したわけじゃないのに、それなのに巡りに巡ってまたこの場所に戻ってきていた。


まるではじめから決まっていたようだった。

物語を終わらせる場所はここだよ、とでも言われているように。




「わたし、廉士さんと出会ったとき手ぶらでしたよね」

「……ああ」




「本当は違うんです」



そう。

ここで追いかけられていたとき、わたしは手ぶらじゃなかった。


“あるもの”を胸に抱えていたんだ。



それがすべての答え。


……わたしの正体を、表しているものだった。


< 199 / 211 >

この作品をシェア

pagetop