微温的ストレイシープ
「ついてきてください」
ふらりと、ある場所へ向かう。
ここはわたしたちが最初に出会った場所だった。
あれだけ走り回って、動き回って。
意図したわけじゃないのに、それなのに巡りに巡ってまたこの場所に戻ってきていた。
まるではじめから決まっていたようだった。
物語を終わらせる場所はここだよ、とでも言われているように。
「わたし、廉士さんと出会ったとき手ぶらでしたよね」
「……ああ」
「本当は違うんです」
そう。
ここで追いかけられていたとき、わたしは手ぶらじゃなかった。
“あるもの”を胸に抱えていたんだ。
それがすべての答え。
……わたしの正体を、表しているものだった。