微温的ストレイシープ
カンカンと踏みならす、金属音。
わたしが想像していたより何倍も長くて、一歩一歩進むたびに不安も増してくる。
いつまで続くの?と前を歩く大きな背中に、心の中で語りかけた。
そもそも、廉士さんと出会ってからわからないことだらけだった。
何もかもわからない状態で、廉士さんは何も話してくれない。
聞きたいこと、いっぱいあるのに。
でも──────
彼の正体は、なんとなくわかってしまった。
まだ確定はできないけど、この階段の先に待ち受けているモノも。
長い階段を下りきった先、重そうな灰色の扉がわたしたちの前に立ちはだかっている。
廉士さんは一応確認をするように、目だけをこちらに向けた。
「開けるぞ」
返事を待つことなく片手で開け放たれる。
その先に広がっていたのは、だだっ広い空間。