微温的ストレイシープ
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「あのな」
諭すように声を出したのは、廉士さんだった。
まるでだだをこねる子どもをあやすようにじっと見つめられる。
「おまえさ、馬鹿じゃねえの」
「……え?」
唐突にかけられた“馬鹿”の二文字に、このときばかりは自分の置かれた状況がどこか吹き飛んでいく。
「お前の記憶は数時間ももたねぇのか?それとも押し出し式なのか?」
「ど、どういう……」
というかひどくないですか。
廉士さんの呆れたような瞳に耐えられず視線を逸らせば、すぐに頬を掴まれ戻される。
わたし、わりと大事なことをカミングアウトしたはずなのに。
なんで廉士さんは平然としているんだろう。
まるで最初からわかっているような、すべてを見通しているような瞳から目がはなせなくなる。
「“どんな世界にいたって、お前はお前だ”。
……これ、誰の言葉だと思う」
廉士さんが口にしたのは、いつかわたしが彼に言った言葉だった。
もちろん忘れてるわけがない。適当に言ったつもりはなかったから。
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「あのな」
諭すように声を出したのは、廉士さんだった。
まるでだだをこねる子どもをあやすようにじっと見つめられる。
「おまえさ、馬鹿じゃねえの」
「……え?」
唐突にかけられた“馬鹿”の二文字に、このときばかりは自分の置かれた状況がどこか吹き飛んでいく。
「お前の記憶は数時間ももたねぇのか?それとも押し出し式なのか?」
「ど、どういう……」
というかひどくないですか。
廉士さんの呆れたような瞳に耐えられず視線を逸らせば、すぐに頬を掴まれ戻される。
わたし、わりと大事なことをカミングアウトしたはずなのに。
なんで廉士さんは平然としているんだろう。
まるで最初からわかっているような、すべてを見通しているような瞳から目がはなせなくなる。
「“どんな世界にいたって、お前はお前だ”。
……これ、誰の言葉だと思う」
廉士さんが口にしたのは、いつかわたしが彼に言った言葉だった。
もちろん忘れてるわけがない。適当に言ったつもりはなかったから。