微温的ストレイシープ
出会ったときのように訊かれたのは、ずっとわたしが望んでいたものだったかもしれない。
灯里。
お前はどうしたい、って。
あのときとすこしもかわらないトーンで。
ああ、と思う。
すべてをわたしに委ねているように聞こえる言い方だったけれど、と。
あのときも、いまこの瞬間も。
廉士さんは
“わたしのなかにある答え”を引き出そうとしてくれていたんだ。
「……天秤、吊り合わないですよ」
わたしと、世界。
どう見積もってもかなりの差がある。
それでも廉士さんはかまわなかった。
「俺は元からまともな人間じゃない。倫理も常識も知ったこっちゃねぇ」
それに、と付け足す。
「強者は生きて弱者は死ぬ。ここはそういう世界だって前にも言ったろ?今さら厄災もちこんだって責め立てられたりしねーよ」