微温的ストレイシープ
わたしの予想は半分だけ当たっていた。
他にも人がいることは想定していたけど、まさか、こんなに多いなんて。
何十もの視線が、いっせいに集まった。
「っ……」
たくさんの男の人の目。
わたしのなかでさっと冷たい何かが流れたような気がした。
怖い。
廉士さんの後ろに隠れようとしたら、すぐに引き剥がされた。
あくまでもひとりで乗り切れ、というわけだ。
「廉士さん、お疲れさまです!」
「そういうのはいいから、やめろ」
人と人との間にできた道を歩く廉士さんは、うやうやしく声をかけられても適当にあしらうだけ。
それでも人の道は崩れない。
なかには彼に羨望の眼差しを向けている人までいる。
ずかずかと歩いていく廉士さんの後ろを、ニコニコしながらついていくわたし。
内心は今すぐにでも走り出したい気持ちでいっぱいだった。
四方八方から、無遠慮な視線が痛いほどに突き刺さる。
なんだこの女、警戒と戸惑いの混ざった目。
笑顔を絶やしたら最後だ、と引きつりそうになる口角を必死で保つ。