微温的ストレイシープ


わたしのずっと頭の上から、好き勝手な声が飛び交う。


名前を聞かれたり、いろんな角度から見られたり。




口をぎゅっと結んでひたすら黙っていたけど、次の発言には我慢できなかった。






「なんか……家出して三日後に帰ってきたキャバリアみたい」




ふっと。
どこからか鼻で笑うような音がした。





「そ、そんなに言わなくても……」

「あ、口きけるんじゃん」



逃げるのに必死で身なりなんて気にしてなくて。



こうして明るい場所で見ると、たしかにわたしはボロボロだった。


< 26 / 211 >

この作品をシェア

pagetop