微温的ストレイシープ
すんすんと匂いを確認していると、周りにいた3人のうちの1人が顔を近づけてきた。
「ひえっ……」
「大丈夫大丈夫、匂いはしねーから!」
そのぱっと花が咲くような笑顔に、身体がすこしあたたかくなる。
緊張がすこしほぐれて、わたしにもやっと暖房が効いてきたようだった。
「でも、なんだってこんなボサボサなんだよ」
わたしの背中あたりまでのばした色素の薄い髪は、その人の言うとおりボサボサ。
自分でなおす前に手ぐしで梳いてくれるから、ちょっと戸惑ってしまう。
「ヤギってば、自分の妹と重ねてるでしょ。その子レンレンの女だよ」
「だってあいつ、最近ぜんぜん口きいてくんねーんだもん」
「そりゃマルバスに入ってるって知ったら誰だってそうなるよ。しかも幹部とか、俺だったら一生口きかないね」
「お前が妹だったら俺だって口きかねーよ、維月」
「弟だろそこは」
目の前でかるく揉めはじめた維月さんと、ヤギさん。