微温的ストレイシープ
「えと、かすったとかじゃなくて」
「これぐらいは入ってたな、たしか」
これぐらい、と虎牙さんが親指と人さし指で示したのは、どう考えてもわたしの小指くらいの長さはあった。
嘘でしょ、と驚くことしかできない。
だって、そんなに深く刺されたのに。
しかもつい昨日。
ふつうだったら入院しててもおかしくないレベルなのに、この人が今いるのは病院のベッドじゃなくて地下室のソファ。
「ま、お前も夜道は気をつけろよ。ここらは特に危険だから」
そう警告してくれるけど、実際に虎牙さんを襲ったのはただの通り魔じゃないらしい。
さらに犯人は、単独じゃなくて複数犯で。
おそらく、敵対する組織の人間……
シュトリの人間たちだと虎牙さんは踏んでいた。